
5月31日、日本代表は東京でアイスランド代表との国際親善試合を迎える。2026年4月現在のFIFAランキングは75位と、最高位であった2018年の18位からは後退しているものの、彼らを侮ることは決してできない。人口わずか約38万人のこの小国は、EURO2016でのベスト8進出や2018年ワールドカップ出場という歴史的快挙を成し遂げた底力を秘めている。全天候型のインフラ整備と高密度な指導者体制、さらに国技であるハンドボール由来の強靭なフィジカル能力の掛け合わせにより、欧州トップレベルの基準を満たすタレントを継続的に輩出しているのだ。
変貌を遂げた戦術とフォーメーション
かつてのアイスランドといえば、極めてコンパクトな「4-4-2」システムによる堅守速攻の代名詞であった。しかし、2025年1月に就任したアルナル・グンロイグソン監督の下で、チームは大きなパラダイムシフトの最中にある。
基本フォーメーションを「4-2-3-1」に変更し、アグレッシブなプレッシングとボール保持によるプロアクティブな戦術への移行を試みている。実際、2025年10月のワールドカップ予選・ウクライナ戦では、アウェイでの試合にもかかわらず驚異のボール支配率65%を記録した。その一方で、彼らの伝統的な武器である「ロングボール」と「セットプレー」の脅威は健在である。特にハンドボールの投擲メカニズムを応用したロングスローは、実質的なコーナーキックとして機能し、相手の守備陣に甚大なストレスを与えてくる。
警戒すべき欧州組のキープレーヤーたち
現在のアイスランドには、欧州主要リーグで確固たる地位を築く実力派が揃っている。日本が警戒すべき中心選手を3名ピックアップする。
アルベルト・グズムンドソン(フィオレンティーナ)
チームの攻撃全権を握る背番号10。ウイングやトップ下というプレッシャーの厳しいポジションにいながら、セリエAにおいて86.5%という極めて高いパス成功率を誇る。2025/2026シーズンは26試合の先発で5ゴール4アシストを記録しており、彼からのスルーパスやカットインシュートは最大の脅威となる。
オリ・オスカールソン(レアル・ソシエダ)
現在キャプテンマークを巻く若きストライカー。ロングボールのターゲットマンとしてポストプレーをこなし、2列目の選手に前を向かせるスペースを創出する戦術眼と、ペナルティエリア内での優れた得点感覚を併せ持つ。
スヴェリル・インギ・インガソン
32歳のベテランセンターバック。強靭なフィジカルによる対人守備はもちろん、後方からのビルドアップ能力にも優れている。ウクライナ戦ではディフェンダーながらチーム最多のボールタッチ数128回、パス成功率90%を記録し、ポゼッション展開の起点として不可欠な存在である。

日本が勝つための鍵——弱点の看破と攻略法
新たなスタイルへの過渡期にあるアイスランドには、明確な構造的弱点が存在する。それは「ネガティブ・トランジション(攻から守への切り替え)の遅さ」と「ハイラインの背後のスペース」である。ウクライナ戦において、彼らは65%のボールを保持しながらも、ボールを失った際の広大なスペースを逆襲されて5失点を喫し、敗北している。
日本のサイドアタッカーが持つスピードと推進力は、この弱点を突くための最適な武器となる。自陣からのビルドアップで相手のプレスを誘い込み、中盤のスペースを経由して一気にディフェンスラインの裏へスプリントする戦術が有効に機能するはずだ。
また、アイスランド守備陣のアジリティの欠如も見逃せない。彼らは正面からのボールには強固な壁を築くが、横方向への揺さぶりや急激な方向転換には対応が遅れる傾向にある。ポケット(ハーフスペースの深部)への侵入からマイナスの折り返しを多用し、相手ディフェンスの目線を下げさせてマークのズレを生み出すことが得点への近道となる。
最も警戒すべきセットプレーやロングスローの場面においては、まともに空中の肉弾戦に付き合う必要はない。ボールの落下地点に対する素早い予測と、地上戦でのセカンドボール回収に徹底してリソースを注ぐことが求められる。
日本代表が自らの強みである圧倒的な機動力と緻密なパスワークを最大限に発揮し、相手の戦術的隙を冷静に突くことができれば、この北欧の難敵から確実な勝利を引き寄せることは十分に可能だ。